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100歳のジャック・フレスコが生きているうちに会いに行こう

人類の未来社会の設計図―「通貨消滅」(ナオミ・フラー著)の発売を記念して、わたくしは読者のためにフロリダ・ツアーを企画している。実施は半年後の9月中旬の予定だ。

著者が傾倒するアメリカの天才、ジャック・フレスコ氏は100歳。ご存命のうちにお目にかかっておくことにはきっとご利益(りやく)があると思う。フレスコ氏自身、少年のころアインシュタインに直接会って議論を交わしたことがその後の人生を豊かなものにした。

フロリダには、フレスコ氏が主宰する争いのない平和な未来社会を目指すヴィーナスプロジェクトの広大な展示場があるらしい。3月に訪れた著者によれば、フロリダの中央部の一等地に点在するフレスコ氏の事業のあれこれは、未来社会のテーマパークさながらだという。

「通貨消滅」などというタイトルのびっくり本が、何事もお金次第の市場原理の国日本ですんなり受け入れられるとは考えていない。それどころか驚き、あきれる向きが少なくないだろう。3年前、eブックランドで「お金の無い社会が来る」と題して電子出版し、少部数の初版限定の紙本を作ったときも反響はうすかった。

だが、それからわずかの間に世の中は様変わりである。
いたるところで紛争、内戦があり、難民があふれて、地球上はどこも不穏な一触即発の空気に包まれている。ついには一次産品が大暴落、マイナス金利が始り、天文学的なお金が隠されていたというパナマ文書が暴露された。冷戦の終焉で平和な世の中が続いたのはつかの間、とんでもない世界になってきた。

これは一体、どうしたことなのか。どこにソリューションはあるのか。
わたくしがあれこれ思案しているところに、ナオミ・フラーさんから「フレスコ氏の100歳の誕生祝賀会に行ってきます」というメールが入った。

「これだ!」とわたくしは声にならない声を上げた。
幼少のころから才能を発揮して現代のレオナルド・ダ・ヴィンチといわれるジャック・フレスコ氏が、かねてから予測し、警告していた事態が、いよいよやってきているのではないか。もう一度、フレスコ氏の言葉に耳を傾けてみよう。わたくしは著者にぜひ、フレスコ氏に直接会いマイナス金利が始まった日本に向けてのコメントをもらってくるようにと頼んだ。


東京に戻ってきたナオミ・フラーさんからいただいたフレスコ氏からの「通貨消滅」の出版に寄せての文章は、わたくしが期待していた以上の内容だった。かくて電子書籍の原文を再編集して、フレスコ氏の言葉を序文に掲げて改めて世に問うことにしたのである。

フレスコ氏はいう。
「科学技術の発達で世の中にはモノがあふれ、AI(人工知能)のおかげで人間の仕事までがなくなってきた。これまでの社会システムではもう間に合わない」
「産業と経済、人類の保全、環境保護の狭間で私たちは身動きが取れなくなってしまった」

この指摘については、わたくしはつい最近、痛感したばかりだ。
田中角栄がブラジルで始めて大成功した熱帯サバンナの農地化を、アフリカのモザンビークで行おうとしたプロジェクトが環境保護団体などの抵抗で空中分解してしまったからだ。食糧危機のアフリカを救おうとした日本のJICAの事業がこうして悲劇的な結果になったことについては拙書「列島改造論からアフリカ改造論へ」のなかで詳しく書いた。まさにフレスコ氏のいう通りのことが起きているのである。

もちろんフレスコ氏と著者ナオミ・フラーさんが「通貨消滅」で論じているお金のない社会がそのまますぐにも実現すると考えているわけではない。ただ、このままではわたしたちの地球はどうかなってしまうのではないかという不安は、いまや誰しもが、一般の庶民までが感じているのではないか。

明日の国のあり方に責任を負う為政者にはなおさらその思いは強いことだろう。
そんな方々にぜひ、読んでもらいたい人類の未来社会の設計図ともいうべき本本である。きっと参考になるアイデアをみつけることができるはずだ。そして「フレスコ氏が生きているうちにお目にかかっておきたい」と考える人も出てくるだろう。

フロリダのヴィーナスプロジェクト訪問のツアー企画はそんな方々のためのものである。いまどきそんなに高価ではない。1週間の滞在でも宿泊と往復の航空券込みで20万前後で組めるらしい。関心のある方はeブックランドまでご一報、予約しておいてください。

作成:Sanshiro 2016.04.22 更新:2016.04.24

びっくりぽんの本は新しい社会を開く扉です

「お金が消滅するというなら、一体、何処へ?」
いまどき、街の人にこう聞けば、「それはパナマでしょう」という答えが返ってくるかもしれない。

ピンポーン。
税金のかからないパナマのペーパーカンパニーに、世界中の名の知れた金持ちや政治家、大企業が天文学的なお金を隠していることが分かった。イギリスなど発覚した各国でのてんやわんやは始まったばかり。この騒ぎに日本が無キズでいられるとは到底、思われない。

まったくこの世の中、びっくりぽんどころか、ドッキリすることばかりである。パナマ文書などは平和な話題のほうで、武力衝突が珍しくないどころか茶の間のニュースの常連になってきた。

心臓に悪い異様な出来事が地球規模で頻発するようになったのはなぜなのか。
それに一つの見方を示してくれるのが「通貨消滅」(ナオミ・フラー著 eブックランド発行 星雲社販売 1800円+税 )である。分類コードはC0033、ビジネス書のコーナーに並んでいるはずだ。

一般の読者も手に取りやすいようにと、「マイナス金利時代に読む過去と未来のお金の話」というキャッチがつけられているが、この本のスケールはもっと深くてでっかい。人類の文明における通貨というものの発祥からの歴史と、これからのお金のあり方、人類社会のあり様についての提言である。

第1章の書き出しから「お金の無い社会が来ると考えたことがありますか?」という文章で始る。市場経済にどっぷり漬かった日本では“ユートピア論”と受け取る向きがあるかもしれないが、それは誤解というもので、第3章あたりまで読み進むとこの本の本当のテーマがみえてくる。

アメリカの現代のレオナルド・ダ・ヴィンチといわれる発明家であるとともに未来学者のジャック・フレスコ氏が、AI(人工知能)の発達で変貌する社会まで見据えて提唱している人類社会の近未来の構想が丁寧に紹介されている。

「かつて人は日々、食べるものを作るために働いていた。それが科学技術の発達によって食べるものは十分に供給されるようになった。いまや人工知能のおかげで人々はモノを生産する仕事からも解放されようとしている。一方でお金に依存する社会は経済と産業、人類の保全、環境保護の狭間で身動きが取れなくなってしまった」
こう語るジャック・フレスコ氏の論理には傾聴に値するものがある。

AI(人工知能)の急激な発達が社会に及ぼす影響については、日本ではようやく最近になって語られるようになった。囲碁や将棋の棋士がAI棋士に敗れたり、自動車がロボットで組み立てられるのはあたり前、コンピュータによる自動運転までが現実のものになってきたというので一般の関心がようやく高まってきた段階だが、フレスコ氏は20世紀も1976年ごろに、その先を読んで警鐘を鳴らしてきた。
http://www.thevenusproject.com/

AI全盛の未来を見据えたこれまでの日本にはなかったマクロ文明論ともいうべき内容だから、政界、経済界から学会にまで広範に大きな衝撃と影響を与えるのではないだろうか。

わたくしの読後感を申し上げれば、この本は核戦争が勃発した後の世界でも争うことを止めない哀れな人間の性(さが)を描く劇画「北斗の拳」(武論尊原作、原哲夫作画)の、対極に位置する作品ではないかと思う。核戦争後の地獄絵図を描く「北斗の券」に対して、ナオミ・フラーさんが書いた「通貨消滅」は、人々がお金というしがらみから解き放たれ、争うことを止めて暮らす社会への道筋を指し示している。

著者のナオミ・フラーさんは福岡県久留米市の出身。モデルをしていた若かりし日に英国に語学留学するうちに英国人のご主人と結婚して、ロンドンと東京で音楽の版権を扱う音楽出版社を経営した。歌手らのスターを招聘してのイベント会社や衛星放送が高価で珍しかったころに楽曲やBGMの配信も手掛け、1999年に事業から引退してオーストラリア・ケアンズに移住した。

音楽の業界はほかのなによりも早くインターネットの登場によるグローバル化の波をかぶった。ナオミ・フラーさんは生き馬の目を抜く熾烈なビジネスで世界中を飛び回り、音楽家や著名人と親交を深めた女性実業家である。そんな暮らしのなかで彼女が遭遇して目からうろこが落ちるように思ったのがジャック・フレスコ氏の考え方だったという。

この3月にはジャック・フレスコ氏が100歳を迎えるというので、米フロリダでの祝賀会まで出かけ、「通貨消滅」の出版にあたっての推薦の言葉をいただいた。日銀がマイナス金利を導入したときを捉えての果敢な出版をタイムリーと激賞してくれたというフレスコ氏からの序文は、本に収録されている。

「通貨消滅」というびっくりぽんの本は4月25日発売で書店に並ぶ。内容はタイトル以上に刺激的で、この本を読まずしてはもはや現実も近未来も語れないだろうと思われる。すでにジャック・フレスコ氏のいう地球の有限な資源に基づく社会の手法はすでにいくつかの分野で実際に始まっている。

一人でも多くの方が人類の未来を争いの地獄ではなく、パラダイスに導こうとするこの本を手に取って明日のために役立ててくださるよう祈念してやまない。

                      2016年4月15日
               eブックランド社長 横山三四郎

eブックランドとしては珍しい初版3000部という本格的な紙本出版です。部数が多いので、販売は専門の星雲社にお願いすることにしたことをお知らせしておきます。
作成:Sanshiro 2016.04.15 更新:2016.04.15

あの大地震の日から5年になる。
読売新聞(3月9日付朝刊)のトップ記事によると、政府は放射能除染を里山にも広げる考えで、5年間に1兆9000億円の予讃を計上するという。

なにをいまさらと思うのは、あの年、わたくしは放射性物質が地中に入り込まないうちに国民総動員で葉や草に付着しているうちに除染するべきだと考えた。考えただけでなく経済産業の旧林野庁の幹部にも談判し、彼らが動かないとみるとボランティア団体「ひまわりの種まき隊」に呼びかけて、実際に福島・南相馬市の山で落ち葉拾いを行ったからである。

放射能に汚染された落ち葉を、手で拾い集めるという無謀なことは、文部省で放射能計測業務をしたこともある放射能専門家の指導と「この程度は大丈夫」という助言もあってできたことだったが、いまでもあのアイデアを国民運動にできなかったことが悔やまれてならない。

除染のボランティア活動の収穫はといえば、おかしな国と国民について勉強させられたことだった。
1、放射性物質を吸い上げるひまわりなどの草を捨てる場所を、汚染された県市町村さえ用意できなかった。
2、除染の工事や防災のための対策は、大手土木会社が利益のあがる工事が受注できるようになるまでは何一つ、始まらないものであることを知った。そこでは談合までが行われていた。
3、炉心溶融の原子炉を横目に稼働を停止していた全国の原子炉の再稼働が着々と進められて動き出した。いまも北のミサイルを1発、日本海側の原子力発電所に打ち込まれたら日本の社会と経済が半身不随になりかねないはずなのに、原子力発電は国策として進められている。

北のミサイルだけではない。自然の猛威は人知を超えるレベルにまで凶暴になってきている。
これを無視して、手続きが整っていれば再稼働していいと考える学者と役人、政治家さんはどのような頭の配線構造になっているのだろう。明治以来の官僚育成システムと知育偏重の教育のためにもはや日本人は救いがたいほど汚染されていると思わざるを得ない。

そんなことも知らず、一途に奔走していたあの年、2011年11月の落葉拾いを敢行したころのブログをここに再録しておく。

冬こそ放射能除染のチャンス
ひまわりに教えてもらったことは多々あるが、その中で最も重要なことは「セシウムは雪ではないので、消えてなくなるわけではなく、回収しなければ放射能の被害はならない」ということだ。

いま、何百億という莫大な税金を使って行われている除染は、小学生でも分かるこの単純な理屈をまったく無視して進められている。

1) 高圧水で吹き飛ばしても、放射性物質はなくなるわけではない。その周辺に散らしているにすぎない。だから放射線量はあまり下がらないし、風雨があると元に戻ってしまうことさえある。
2) 放射線量の高い側溝のドロや汚染された植物を捨てる場所がない。
3) そうこうするうちに放射能の二次汚染が始まっている。

二次汚染にはいくつものパターンがあるが、一つの原因は福島の農家が各地でおこなっている野焼きである。

農家にとってはいつもの秋と同じことをしているに過ぎないのだが、この秋の田畑の草には放射性物質が付着している。付着しているだけでなく、春からの成長過程で地中の放射性物質を吸い上げている。焼却すると、その灰には 100 倍にも濃縮された放射能が含まれているから、セシウムを空中散布しているようなものである。

これよりも大変な二次汚染は、福島第一原発の西北西の阿武隈山系に降り積もった放射性物質が、季節風に乗って里に吹き飛んできたり、小川や地下水とともに平野部に拡散することだろう。NHKのクローズアップ現代は「新たな懸念 水が運ぶセシウム」(11月8日放映)で少し、取り上げていたが、そんなことは当たり前な話だ。

ここに興味深い調査がある。

山岳地帯に落下した放射性物質は、その9割が葉っぱに付着しているというのだ。「セシウムなどの放射性物質はいまのところ葉に付着しており、それを除去することで9割ものセシウムを回収できるだろう」というのだ。文部科学省の委託研究で筑波大学の恩田裕一教授と気象研究所が合同調査して、9月13日に発表した。

以来、わたくしの頭では「落葉拾い国民運動」のイメージがどんどん膨らんできている。この秋から冬、来年の若葉が茂るころまでが、福島を救う最後のチャンスなのではないかと考えるようになった。このときを逃せば、葉に付着した放射性物質は落葉が朽ちるとともに土中に入り込んで、ちょっとやそっとでは取り除くことができなくなる。

もはや政府の出方を待っている場合ではない。私たち個々人が動くときではないだろうか。

福島に行けば、広大な山野を覆う膨大な森林を前に、除染など到底不可能だと威圧される。しかしながら福島を救うのは今しかないと思う。ひまわりの種まき隊がやったように、人海戦術であの山々に取りつくのだ。そのスケールは数百人ではなく、数千、数万の規模でなければならないだろう。だから「落葉拾い国民運動」なのである。

シルバー世代には未来の世代のために、放射能のない自然を残す義務があると思う。

                                   ひまわりの種まき隊 代表 横山三四郎

作成:Sanshiro 2016.03.10 更新:2016.03.11

30年計画でエジプトから南アまで8000キロ

去年の初夏にゾウが密猟で激減しているというニュースを知ってから、アフリカにのめり込んでいる。

もちろんそれだけではない。
もう一つの理由は、アフリカから多くの自爆テロ戦士と難民たちが生まれているからだ。これはもはや世界の最大の関心事だろう。

しかし、まさかエジプトのアレキサンドリアから南アのケープタウンまで、アフリカを縦断する高速鉄道建設という突拍子もない提案をすることになろうとは、わたくし自身、予想だにしなかったことだ。

それは中国のせいである。
アフリカ進出を国家戦略として進めてきた中国は、いまやアフリカを中国の大陸にしかねない勢いだ。わたくしは明日にもアフリカのどこかの国が共産政権になり、その要請で中国人民軍が駐留するような事態が起きても驚かないだろう。

冷戦終焉の前から、中国はアフリカへの浸透を図り、太平洋岸ではタンザン鉄道(タンザニアーザンビア)を敷いたし、1990年に冷戦が終焉するとさらに資源確保を目的にアフリカ各地での投資を拡大した。いまもエチオピア鉄道(ジブチーアディズベバ)を建設中で、大西洋岸でも海岸沿いの国々を走る鉄道建設を計画して進めている。

日本がアフリカに入り込めるところは、もはやエジプトからの中央突破のルート、アフリカ縦断高速鉄道しか残っていないのである。

わたくしが今年に入ってから「列島改造論からアフリカ改造論へ」という題で、アフリカの諸問題を解決するため連載を書いていたが、その間にも、中国の習近平主席はイランを訪れてテヘラン―マシャッド間の高速鉄道建設を発表した。かつては日本が新幹線を輸出しようとしていたルートだ。

しかし残り物に福あり、アフリカ大陸を縦断するルートは宝の山に分け入るような結果をもたらすかもしれない。

沿線には様々な資源の鉱山が海から遠いために開発されないままに転がっている。もう一つはアフリカ中央部に広がる熱帯サバンナが豊かな農場になって、アフリカを世界の穀倉に変えかねないことである。熱帯サバンナ開発が進めば、穀物を港まで輸送する支線が敷かれて輸出されることだろう。

しかも30年後にはやってくる人口100億時代に、一番、人口が増加すると予測されているのがアフリカなのである。もし何もしないでいたら、いまよりも膨大な数の難民たちが地中海を越えて北に向かい、欧州各国のナショナリズムが激高してEUの結束も吹っ飛んでしまうだろう。その兆候は日々のニュースで私たちが目撃している通り、EU諸国では自爆テロ警戒に疲弊して民生が犠牲になり始めている。

アフリカをどう立て直すかは人類が築いてきた文明・文化を守れるかどうかの攻防の段階に至ったと思う。
すでに中東情勢は日本の安全保障に影響を及ぼしており、そろそろ応分の貢献を要請されそうだ。湾岸戦争のときに日本は参戦の国々に1兆2000億円の寄付をして、ろくに感謝もされなかったことを思い出す。そんなお金を払うくらいなら、アフリカ縦断高速鉄道の皮切りとしてエジプトのアレキサンドリアからカイロ経由ルクソールを走る新幹線建設を提案してはどうだろうか。

インドネシアの新幹線の案件を土壇場で中国に奪われた安倍政権は、つい最近、インドのムンバイとアーメダバード間505キロに新幹線を輸出することで合意した。
インドへの新幹線の輸出では政府の債務保証の条件を外しただけではない。1兆円(120億ドル)を年利0・1%で50年間、融資するだけでなく、15年間、返済を猶予するという条件を提示して獲得したという。いまだかつてない優遇措置である。

こういうことができるのなら、2月下旬に来日するというエジプトのシシ大統領におなじような条件で提案してみてはどうだろうか。これが実現すれば日本は新しい時代のアフリカ支援のあり方を世界に誇ることができるだろう。
作成:Sanshiro 2016.02.15

中央アジアの関ヶ原の戦い

予想していたとはいえ、あまりの中国の手際のよさである。
習近平中国主席はイランへの制裁解除が確定した数日後にはテヘランを訪問して、テヘラン―マシャド間の高速鉄道の建設を取りつけた。

テヘラン―マシャド間の高速鉄道は1970年代後半、日本が新幹線を建設することでイランと合意していたルートである。詳細な調査が終わり、着工するばかりになっていたが、1978年暮れのイラン革命で中断になっていた。

だから2015年7月、イランが核開発問題で譲歩して経済制裁の解除の方向が固まった段階で、わたくしは「地球改造論」(eブックランド 2015年9月11日刊)を電子出版して、なにがなんでも日本の新幹線計画を復活させようと関係者に呼びかけていた。
http://www.e-bookland.net/gateway_a/details.aspx?bookid=EBLS15091100&c=89

「地球改造論」に書いたように、1975年にイランと日本の海外鉄道技術協力協会(JARTS)との間で契約が交わされた新幹線計画は首都テヘランからイラン東部の聖地マシャッドまでおよそ900キロもの距離を結ぼうもの。そのころの日本での営業は、まだ東京=新大阪間の515キロだからその倍近い長さだった。

1976年には運輸・施設・電気・軌道・車両・車務などの各分野の専門家がイランに飛んで現地での調査に入った。日本としては初めての新幹線の海外輸出である、これが成功すれば新幹線は世界中に路線を広げるかもしれない。鉄道マンたちは大きな期待に胸を高鳴らせながら日夜、路線の調査と測量など建設計画に取り組んだ。

テヘランーマシャッドの路線は、地図でいうとカスピ海の南側にそびえるエルブルズ山脈の南麓を東西に走る。気候的にはそう高温でもなく、日本の技術陣にとって未知の問題はなかった。1978年初めには第1フェーズのマスタープラン(総合計画)がまとまり、テヘランから東側100キロの部分に着工するため詳細な設計を含む実施計画の第2フェーズの設計に入った。このときにイラン国内でイスラム勢力による反王政運動が激しくなり、78年暮れにパーレビ国王が出国を余儀なくされて新幹線計画も事実上、ご破算になってしまったのだった。

このようないきさつのあるテヘランーマシャド間のルートなのだから、イラン側もある程度は日本に対して配慮するのではないかと、日本側にはかすかな期待があった。しかし、1月23日の習近平主席とロウハニ大統領の会談後に発表された合意文書は「テヘランーマシャド間の高速鉄道は中国が資金を提供して建設する」と明記して、日本の挽回の余地さえなくなった。

北西部のイラン第2の都市マシャドは、中央アジアへの玄関口に位置している。中国にしてみれば、間に峻険な山岳国家アフガニスタンがあるために、一帯一路の現代のシルクロードを結ぶためにはどうしても確保しなければならないところだ。日本でいえば列島の東西を結ぶ関ヶ原のようなところで、中国は今回の合意でユーラシア大陸の戦略的な要衝を確保したといえる。

日本には、札束攻勢で中国にさらわれてしまったインドネシアでの新幹線計画に次ぐ敗北だといえる。中国はイランがアメリカと外交関係の断絶している間も、テヘランを陰に陽に支援してきた。だから予想はされていたとはいえ、このままでは日本のインフラ関連の輸出は苦境に立つことになる。

いま、わたくしはアフリカに目を転じて、自爆戦士と難民を輩出する温床と化したアフリカを豊かにしたいものと「列島改造論からアフリカ改造論へ」を書いている。ここでも中国は国家戦略として攻勢に出ている。日本も早く目を覚まして戦略を打ち出さなければならない。
作成:Sanshiro 2016.01.26

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