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e ボード」の夢

 

石板に書いては消し、消しては書いたかすかな記憶が残っている。いつごろのことか、はっきりしないが、小学生になる前、紙も鉛筆もなくなった太平洋戦争中のころだったかもしれない。

 

石盤については、紙がふんだんに使える時代に育った人々には、もう少し、説明しなければならないだろう。 粘板岩の小さな黒板のようなもので、ロウ石や滑石(かっせき)を棒状にした石筆(せきひつ)で字や絵を書く。書いた文字や絵は布で簡単に消して、また書くことができる便利な文房具だ。 

 

さらにいえば、日本の子どもたちの筆記用具は、寺子屋のころは毛筆と墨だったが、明治初期に欧米から石板と石筆が導入されて、 鉛筆と紙が普及する昭和初期まで、子どもたちは半世紀もの長い間、これを使って勉強した。 しかし、面積が小さく、書いた記録も残らないことから、低学年の子どもたちのものだったといえる。

 

石板の記憶が突然、よみがえったのは、 21 世紀ならではの石板のような便利な電子文房具のアイデアが浮かんだからだ。

 

どのようなものかというと、テレビやパソコンのデイスプレィをイメージしてもらえばいいだろう。テレビもパソコンもブラウン管の入った四角な形から、技術革新で薄型のものに変わってきている。ただしデイスプレィの映像を表示する部分はまだ液晶で、石板のような自在なアナログ性はない。

 

ところがついに、手で書いては消し、消しては書ける石板のようなタイプのものが日本のメーカーの手で開発されたのである。 キーボードとウインドウズのOSを使わない情報伝達の手法が開発されたことは、ビル・ゲイツの呪縛から逃れることができるということでもあって、誠に慶賀に堪えない。

これを使えば、板状のデイスプレィに、軽いジュラルミンの枠をつけて持ち運びができる教科書兼文房具をつくることができる。かつての石板のように頑丈で感触のいい木枠でもいいかもしれない。

 

筆者は“ e ボード”と名付けているが、その特徴を列挙してみよう。

1)     液晶のように自ら発光するのではなく、自然光の反射光で読める紙に似た性質をもつ。だから電気を食わないだけでなく、目が疲れず、長時間利用できる。

2)     手書きで文字や絵が書け、なんどでも書いたり、消したりできるアナログ性がある。つまりタッチパネル式での利用ができてキーボードが要らない。必要ならばキーボードでも操作できる。

3)     描いたりした文字や画像は、携帯電話のように電波でサーバーに送って保存、記録することができる。

4)     e ボード”にはUSBポートがあって、パソコンやサーバーに送ることができる。またマイクロSDカードのような記憶媒体から文字や映像データを取り込んで、パソコンのデイスプレィのように、例えば教科書を表示することができる。

5)     モノクロだけでなく、カラ―でも表示ができる。

6)     落としたり、たたいたりしても壊れにくい。
大きさはA4から自在にできる。

7)     量産することで安価に製造できる。

 

これらの性能は、 21 世紀の石板と呼ぶにふさわしい。教科のテキストをカラー表示できるので、あらゆる年次の児童生徒が使える教科書に変身し、それをなぞって勉強もできる文房具になる。

世界には紙も鉛筆もままならない国が沢山ある。子どもたちは勉強したくてもできないでいる。 e ボード”にそれぞれの国の言語の教科書を組み込んでプレゼントしてみたい。

 

e ボード”の“ e ”は、 エコノミーでエコロジーの意味でもある。 紙を使わず、地球の緑の保全に寄与する“ e ボード”の商品化の意義には途方もなく大きなものがあるとにらんでいる。

 

2010 年はわたくしの新しい夢が始まる年になりそうである。


 

by Sanshiro 更新:2009/12/31 13:53 作成:2009/12/31 06:46

グローバル化は科学技術とともに

 

何が人や社会を変えるのか。 人の志もあるけれども、最近、 それはなによりも技術であり、技術こそが人と社会を変え、技術が進歩するから人と社会が変わるのだという思いを強くするようになった。

 

グローバル化にしても同じことがいえる。飛行機のような高速移動と通信手段が発達したから、私たちも、社会も、ここまでグローバル化している。

 

100 年前、人々は前世紀末の内燃機関の発明とその革新に夢中だった。船、自動車がエンジンで動くようになり、飛行機までが空を飛ぶようになった。アメリカのライト兄弟が初めて飛んだのは 1903 年だった。

 

『星の王子さま』の著者、アントワーヌ・ド・サン = テグジュペリも空を飛ぶという熱病にかかった 1 人で、ついには郵便を運ぶ飛行機のパイロットになって、アフリカへ、南米へと向かう。危険極まりない飛行機乗りについて書いた小説『夜間飛行』は大ベストセラーになり、香水「 Vol de Nuit (夜間飛行)」までが作られ、いまなお世界中の女性に愛用されている。

 

サン = テグジュペリは 1944 7 31 日、コルシカ島からドイツ軍占領下のフランスの偵察飛行に出撃したまま帰らぬ人となったが、 2004 年春、 60 年ぶりに搭乗機がマルセイユ沖に沈んでいるのが確認された。

 

その搭乗機ロッキード社のP‐ 38 型ライトニング機は高度 6000 メートル以上を高速で飛べる当時の最新鋭機で、南太平洋のブーゲンビル島上空で日本帝国海軍の山本五十六司令長官の乗った飛行機を上空から襲って撃墜( 1943 4 月)したのは同型機である。太平洋戦争で日本は技術の遅れのために敗れたことを象徴する出来事だった。

 

初期の飛行機ブームから 100 年、いま、世界を覆っている熱病はインターネットである。 核戦争の勃発時に負けないよう ICBM (大陸間弾道弾)の発射の瞬間を探知するために開発された技術で、地球を1秒間に7回半回る光のスピードで伝わる電気信号を使う。このためインターネットは距離と時間をなくしてしまう。

 

核は、使えばやられるので戦争を不可能にした究極の最終兵器とされる。それをいうならばむしろインターネットこそは究極の不戦のための技術ではないだろうか。世界中の民族と社会が瞬時に結ばれるようになって、日本も鎖国しての見ザル、聞かザル、言わザルはまったく不可能になった。

          

           (「 グローバル教育通信」( 2009 11 月号)に書いたコラムの転載です)

by Sanshiro 更新:2009/11/16 18:37 作成:2009/11/07 05:24


eブックランド今昔

ネットの世界はあわただしく、1年が7年の〝ドッグイヤー〝の感覚で推移する。 2004 年秋に設立して6周年を迎えた電子出版社 e ブックランドは、人間でいえば 35 歳になったということになる。 
実際、本邦初の電子自費出版社はなかなか立派に育った。

これも著者のみなさま、利用者のみなさまのご愛顧のおかげで、これからも宜しくお願い申し上げます。

 

6周年を迎えての事業として、あらたに写真による表現のステージ「 e ブックランド PHOTO ギャラリー24」を立ち上げた。 時間はかかるだろうけれども、 いずれ多くの写真集を展示するようになって、文字による作品群とともに e ブックランドの柱に育ってほしいと願っている。

 

写真に向いていることもあって、 e ブックランドは使用する電子書籍のフォーマット(規格)を、 PDF に移しつつある。 PDF は米アドビ社の規格で電子書籍のほとんどデファクトスタンダードになっているために、使わざるを得ない。

 

これがちょっとばかり無念なのである。

 

5年前、 e ブックランドを立ち上げるにあたって秘かに考えていたことがあった。日本人が創作を楽しみながらインターネットに親しむことが一番の狙いだったけれども、それだけでなく、いずれは マイクロソフトの総大将ビル・ゲイツの鼻をあかしたい、なんとかして一矢を報いるチャンスをつかみたいと思っていたのである。

 

電子立国であったはずの日本は、インターネット・ビジネスで遅れをとって沈没、電気機器メーカーはパソコンの組立て工場になり下がった。しかもパソコンを組立てて販売するたびに、マイクロソフトとインテルにライセンス料を支払わなければならない。なにをするにしてもビル・ゲイツにお金を貢がなければならない構図になってしまった。どこかでリベンジすることはできないものか。

 

  e ブックランドは最初、ソニーが開発した電子書籍の規格である BBeB Broadband e-Book の略)を採用してスタートしたのにはこんな魂胆があった。 パソコンの基本ソフトでかなわないのであれば、国産のフォーマットで情報のサービスの分野から反撃してみようと考えたのだ。

 

ところがその直後から、ソニーの業績は迷走し始めて、電子ブックどころではなくなる。 電子書籍が紙の本のビジネスモデルを窮地に陥れることを懸念する日本の出版業界が売れる本を出さず、巧妙に足を引っ張ったためにソニーの読書端末「リブリエ」はさっぱり売れない。ついには電子書籍ビジネスでソニーは日本から撤退してしまった。

 

日本市場をあきらめたソニーは電子書籍端末の開発部隊をそっくりアメリカ西海岸に転勤させて、新しい読書端末 Sony Reader を発売した。 これが成功して、アマゾンにキンドルを開発させるきっかけにもなる。 米調査会社によれば、このキンドルと Sony Readerがブレイクして、 2009 年のアメリカでの電子書籍の読書端末の販売は 300 万台に達っする。シェアはキンドルが65%、Sony Readerが35%だという。

 

しかしそれは本屋が近くにない広大なアメリカでの話である。キンドルは日本でも発売を開始したけれども、いまのところはまだ英語のサービスだけ。 BBeB も読める Sony Reader の日本再上陸の話はなく、 e ブックランドはそろそろ BBeB の利用も断念せざるを得ない情勢で、 PDF を重用せざるを得ない。

 

PDF を読むための閲覧ソフト Adobe Reader は、マイクロソフトのほとんどのパソコンに出荷時からインストールされている。 マイクロソフトとアドビ社が組んでのいわゆる抱き合わせ販売だ。 e ブックランドの PDF の利用もビル・ゲイツを喜ばせるばかりで、 e ブックランドの創業時の志は裏目にでている。6周年を迎えることができたことは嬉しいけれども、気が晴れないのはこのためである。 

けれども、こんなことはもはや瑣末なことだろう。5年前、eブックランドを立ち上げたときには「文字は紙の上で読むものだ。デジタル文字などとんでもない」と電子出版を白い目で見る向きがとても強かったが、そんな人々はとうに少数派になって電子書籍は日常のものになった。携帯電話の劇的な普及のせいである。

また日本は経済的に中国をはじめとする発展途上の国々から急速に追い上げられるようになった。知識と技術をたちまちコピーしてしまうインターネットの普及なしには考えられない現象だ。このあたりまではほぼ予想した通りだが、悪いことは重なるものである。

史上最大規模に膨れ上がった民主党の予算編成は、日本の財政硬直化が危ういまでの動脈硬化を起こしていることを示した。不況による税収不足のせいばかりではない。インターネットによる世の中のパラダイムシフトを直視しようとせず、赤字国債を発行しまくって湯水のように税金を使い、しゃぶりつくしてきた報いだ。 行政システムと公務員ばかりが肥大して事業に使えるお金はほとんどなくなってしまった。

その民主党政権は先進諸国で最も野心的な二酸化炭素の削減の方針を打ち出した。とことんの環境保全のエコな政策が正しい軌道を描くならば、いずれ緑を破壊する紙の本をできるだけ少なくして、電子書籍でまにあうものは電子書籍で済ませるというところに行き着くだろう。まさにeブックランドの主張で、国会図書館は2011年度からの電子書籍の配信に向けて動き出している。

e
ブックランドの創業のころは、いまは昔、人々の生活までを根底から揺さぶるさらなる変動が襲ってきている。これを記録するのもeブックランドの役割になることだろう。すでに今日のパラダイムシフトを予見した「リバースエコノミーの時代」(福田 征孜著)のような名著が電子出版になっている。


 

 
by Sanshiro 更新:2010/01/01 05:26 作成:2009/10/14 08:15

広域行政の敢然施行


インターネットが日本の政治を変えたことについてシリーズで指摘してきた。さらに言えば、新政権はなによりもまずインターネットをもっと使って、地方行政の簡素化とスピードアップを図らなければならないと思う。

 

そうすれば行政はもっとスリムにできるし、効率化を図ることができる。そしてお役人を減らすことができ、人件費を節約することができる。

 

日本の輸出入は前年比で4割前後も少なくなっている。日本経済はそれだけ縮んでしまったということだ。これにより税収が減り、国や地方自治体の税収が減ってきた。それでも公務員の給与はこれまで通り、毎日、払わなければならない。

 

手をこまねいていると、地方都市のみか、国そのものが夕張市になってしまう。累積赤字国債が 800 兆円をはるかに越えて、日本の財政はすでに夕張化しているとみる経済学者は少なくないが、とにかく手は打たなければならない。

 

国民の要望が高まる一方のなかで、どうやって人を減らすか。行政サービスの質を落とさずに、いかにしてコスト削減を図るか。解決不能にもみえる難題のソリューションは、唯一、インターネットの適切な利用だといえる。

 

まずは道州制の広域行政の実現が急務である。中小の市町村が重複して行っている地方行政の仕事を、広域におこなって事業コストと人権費を圧縮するのは当たり前のことだ。

 

いまは全国の自治体が地方自治の名のもとに、それぞれがそれぞれのシステムを作って、効率化からはほど遠い行政を行っている。行政のシステムそのものをできるだけ統一して、コストの最小化を図らなければならない。総務省の旗振りで北海道や京都、佐賀、大分、宮崎各県がスタートしている税収や人事、文書管理システムの共通化の動きは、とても大事なことだ。

 

現在の都道府県の地域割は、なんのことはない江戸時代の参勤交代、明治の廃藩置県の名残でしかない。人がかつぐ籠に代わって自動車が走るようになっても、大した変更はなされていない。ましてインターネットを使った行政の改革は、掛け声ばかりで現場ではほとんど具体化していないのが実情だ。

 

民主党政権には、歴史的大勝のチャンスを生かして、ネット時代にふさわしい大胆な列島改造に着手してほしいものだ。地方自治体への権限移譲の前に、その行政システムを時代にふさわしいものにアップグレードする必要がある。日本の財政健全化は、迂遠なようだがこれを実現するところに解決のカギがある。

民主党のマニフェストを読む限り、残念ながらこのあたりの考え方が一向にみえてこないのは心配だ。この点、自民党は道州制の構想ではかなり具体的に踏み込んでいた。




by Sanshiro 更新:2009/09/06 03:50 作成:2009/08/31 19:40

公共政策型シンクタンクの勧め

 

今回の総選挙ではマニフェスト(政権公約)で民主党が先行した。これに自民党がついて行けず、もたついて有権者に悪い印象を与えた。

 

マニフェストなる言葉を、わたくしが初めて聞いたのは、 1984 年秋のことである。フルブライトのジャーナリストプログラムでワシントンに遊学していたときで、レーガン政権の二期目の大統領選挙が行われようとしていた。

 

ワシントンでは新興のシンクタンクが、「われわれのマニフェストは第一次レーガン政権でこれだけの政策を実現した」とその影響力を誇示するとともに、二期目の政権のためのマニフェストを掲げて、その実現を議会やホワイトハウスに迫っていた。その提言には国民の生活から国の安全保障にかかわることまでが網羅されていた。

 

民間のシンクタンクが、政党のために政策を練り、作り、その実現を迫る―というのは、日本ではみかけないことである。 興味深く思ってヘリテージ財団とかアメリカン・エンタープライズ・インスティテュート( AEI )、ブルッキングス研究所といったシンクタンクと呼ばれる組織を訪ね歩いて、調べた。

 

ワシントンでシンクタンクといえば、政治にかかわる公共政策型の組織のことを指す。その運営は、個人や企業からの寄付金で賄われるが、そのお金は決してひも付きであってはならない。公共政策を扱う以上は、シンクタンクは党派に偏ってはならないとされる。

 

シンクタンクが政治家や研究者を招いて行うセミナーなどでは理事長が、わざわざ冒頭に挨拶して、その独立性を宣言するという気の配りようだ。公共のための政策を扱う以上は、特定の政党や党派のためであってはならないという考え方からである。日本の大企業や企業グループの名前を付けたシンクタンクについて幹部に聞くと、「それぞれの企業の利益のための研究機関ではないか」と峻別し、政府や省庁の予算で運営される研究所についても「税金を使っているのであれば、政権に奉仕するもので、われわれのシンクタンクとは別物」と語った。

 

もちろん政治にかかわる研究機関である。それぞれの主義主張がなければ、運営資金も集まりはしない。それぞれのシンクタンクには政治的なスペクトルがある。ヘリテージ財団や AEI は共和党系とされ、ブルッキングス研究所は民主党系と目されて、研究員には大統領選挙で落選した前、元大統領やホワイトハウスのかつてのスタッフらが目白押しだ。

 

しかしながらここで一つ、気になることがある。

 

それは 1970 年代から 80 年代にかけて、独立自尊のアメリカの再生のために、保守系シンクタンクが知恵をしぼった市場原理重視の規制撤廃の政策が、金融システムの暴走を招いて破綻し、多くの分野で再び政府の関与を許してしまったことだ。多大な税金の投入も行われて、数十年、逆戻りしてしまった。 日本でも同じことがいえるが、それが国民のためにならないことは明らかだ。

 

民主党は、政策制定をこれまでの官僚まかせから行政府の手に取り戻すことを宣言している。果たしてこれを実行できるのかどうか。政治家は一旦、選ばれると、選挙区の面倒見からはじまって途方もない雑事に忙殺される。ついつい官僚に頼ることになりはしないか。

 

せっかくの民主党政権が元の黙阿弥にならないためには、在野に公共政策型のシンクタンクが生まれなければならないだろう。野党になった自民党にしても、いつの日か再生するためにも、支持者は本当の意味での公共政策型シンクタンクを興して、常日頃から政策論争を仕掛けなければならないと思う。



by Sanshiro 更新:2009/10/10 04:25 作成:2009/08/30 20:09

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